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キャンピング・レボリューション 〜 エアーストリーム搭乗記
1930年の第一号の誕生以来、変わらず絶大な人気を保つエアーストリーム。その流線型で銀色に輝くボディーは見る人の心をたちどころにとらえてしまう確固たる魅力に溢れている。
“気流”という名のキャンピングカー
バンクーバーに移民するかなり前のことだが、日本で、小型のバンの車内をキャンピングカーに改造し、東京を旅だったことがある。
ナチュラリストをきどる仲間3人で、一ヶ月かけて北海道をまわってきた。キャンプ場のみならず、川、湖、森あらゆる自然の中でテントを張った。キャリアーボックスを車の屋根に乗せて荷物の収納に役立てた。
車内はハンモックを吊ってベッド代わり、ポータブルのトイレも積んでいて、調理用品をはじめ簡易な生活に必要なものはすべて揃っていた。移動に次ぐ、移動で、困難も多かったが、何一つ、固定の日常を持たず、シンプルに哲学的な時間と空間をただよった日々は、他のあらゆる経験にも増して、私にとって意味のあるものとなった。
カナディアンロッキーのキャンプエリアのメッカ、バンフのキャンプ場で、エアーストリームというビンテージキャンピングカーで宿泊する、一風変わったキャンプをすることになったとき、正直、たいして心は騒がなかった。既成のキャンピングカーにあまり興味がなかったし、キャンプ場でのキャンプ自体、無味なものに感じられた。よほどの魅力がなければ、特筆すべきところもないだろうと、かなりクリティカルな心持ちで、出かけていった。
古き良きアメリカの香り
カナダに移民したのは何故かとよくきかれる。「アメリカに近いから」と答えたら、カナダ人に袋だたきにあうだろう。カナダのどこが好きかと聞かれたら、自然が好きと答え、アメリカのどこが好きかと聞かれたら、20年代から40年代のすべてが好きと答えるだろう。とくにダイナーの丸っぽい形のアルミのテーブルがいい。この時代のトレイン、これも丸い屋根の形がいい。
バンフのキャンプ場に到着し、すでに牽引されて置かれていたエアーストリームを見たとたん、一目で愛着を覚えた。
角材のような他のキャンピングカーの群れの中で、ひときわ異彩を放っている。さすがに1930年の第一号の誕生以来、変わらず絶大な人気を保っているキャンピングカーだと、ついうなってしまった。その流線型で銀色に輝くボディーは見る人の心をたちどころにとらえてしまう、確固たる魅力に溢れている。
まるで飛行機に搭乗気分
35年前に作られたというこのエアーストリームは、入り口のドアの留め金が少し留まりにくい、とオーナーのCCSの森田さんから説明を受ける。コツがいるのだと教わり、すぐにマスターした。中に入り、実にひろい車内に驚く。前方部分はリビングルームになっていて、テーブルをコの字に囲んで長いベンチに作ってある。夜にはそこが、ベッドになりふたりがそれぞれ頭をつき合わせて寝ることができる。
車内中央部分はシンクと冷蔵庫、収納庫が対面となっていて、シンクの下はフライパンや大小の鍋、カラトリーが納められ、シンクに向かっていて、調理に必要なものはくるりと身体を回転させるだけで、すべて収納庫から用具や食品を取り出せる、その見事な機能性に、またうなってしまう。収納庫の中には、湯沸かし器、トースター、炊飯器、コーヒーメーカー等が揃い、コンテナの中には白米。調理するための調味料もひととおり並んでいる。シンクの横にはストーブ(レンジ)もあり、車内で簡単な料理を作れるようになっている。
「外のバーベキューグリルでの調理が便利ですよ。グリルの横でお湯も沸かせるし」森田氏は、車内の細かい説明の合間に、急にうれしそうな声になる。「私もこれでよくキャンプするんですよ」それで納得。この使い勝手のよさそうなセッティングは普通じゃない。自分で使ってみて、次々いろいろ備えていったに違いない。使う者の視点ですべてが整っている。必要なものがコンパクトにおさまった、ちょうど飛行機に乗り込んだ時の印象だ。
自然にいざなう夢のフライト
ボディは飛行機に使うのと同じ航空アルミを使ってあるときき、飛行機搭乗気分がいや増した。前方部にはダブルベッドとシングルベッドが対面に置かれ、その間の通路の先の後部は、バスルームになっている。バスルームは引き戸タイプのドアで仕切られていて、中に入ってドアを閉めてみても、少しも狭さを感じない。アールを描いている窓の開口部の広さと、つきあたりにつけられた小さい手洗い用の シンク、フルバスタブ、トイレット。すべてに、どこかゆとりを感じる形のマッチングが、心地よい空間を作り出している。ドアが全面鏡になっているので、着替えるときに便利そうだ。
私はさっそく水着に着替えて巻きスカートを履き、Tシャツをはおった。バンフのダウンタウンで買い込んだアルバータビーフと新鮮な野菜をバーベキューグリルで焼いて食べたあと、キャンプ場から20分ほどドライブした山の上にあるアッパーホットスプリングになだれ込む算段だ。
エアーストリームが置かれたキャンプスポットは側面にランドル山を望む、絶好のロケーションだった。このフックアップサイトでは、電気、水道をキャンピングカーにつなぐ事が出来る。車内で潤沢に水が使え、夜にはライトも煌煌とつけることができた。電気ストーブが備えられていたので、日没後、気温が下がっても臆する事なく、夜更かしすることができた。車から50メートルほどのところに、清潔なパブリックのトイレがあり、シャワーのお湯もふんだんに使う事ができ、まさに至れり、つくせりの完備ぶり。
絶品のステーキに舌鼓を打ち、片付けもし終わり、チェアに座って眼前に迫るランドル山にあたる夕陽を眺めながら、ふと物思いにふけった。キャンプにつきものの、疲れやあわただしさが、まったくない。暗さや寒さに対する不安もなく、うしろにひかえた居心地のいい寝床、帰路につく鳥たちの鳴き声もすっかり静まって、ゆっくりと夜のとばりが降りていく時間を楽しんでいる。なんという至福感。
今まで感じていた自然が、もっときめ細やかな違う形の魅力を放ちはじめた。これは私の中でちょっとしたキャンピング・レボリューション。
『エアーストリーム機』は私が掲げる祝杯のグラスに優しい反射を返した。革命万歳。
カナディアンコーディネイトシステムズ(CCS)
東京生まれ 。日本において「an an」、「Hanako」などの雑誌編集、JAL、東京電力、シチズン、ブリジストン、日本興業銀行等のメジャー企業の広告を手がけるアートディレクターとして活躍していたが、バンクーバー移住後はフォトグラファーに転向し、バンクーバーで数々の写真展を開催している。写真の主なモチーフは、自然、街、人。また、2005年にファッションブランド、Jha Jha Ojha Angelをスタートさせ、現在までに2回のファッションショーを開催している。
http://www.emu-photograph.com/
う~ん、かっこいいです。
キャンピングカーも文章も何てかっこいいんだろうと思わずうなってしまいました。私も是非乗ってみたいです、、てゆうかコレ自分用に絶対に欲しぃ~。