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グラッシーハイツ滞在記

by 後藤えむ last modified 2006-08-02 19:01

キャンモアにある日本人経営のB&B。我が家のように清潔でくつろげる空間が嬉しい。

カナディアン・ロッキーへの旅

付近の街並

あらためて言うまでもなくカナディアン・ロッキーは世界的に知られた観光地である。カナダに移民して、バンクーバーに住んでいる私にとって 、ロッキーへの旅は日本に住んでいた頃の感覚でいうと、ちょうど東京から新幹線に乗って、京都に出かける感じだろうか。街中の暮らしの中でふと、景観の静けさだけではなく、心の静謐を得たい、そのような時に引き寄せられるように訪れたくなる場所と言い換えてもいい、観光地にありがちなざわざわした猥雑さが、土地自体が持つエネルギーの清浄感で消されてしまう、神力を持つ上質の観光地。

“三人の女僧”に守られる街

「恐竜の爪あとのような」と異系の表現で語られるカナディアン・ロッキーはそのどれもが特異な形でそびえたち、訪れる者に強烈な印象を与える。また時には、その岩山の形は、太古からさまざまな物語を連想させてきた。

今回の旅で滞在したB&B『グラッシーハイツ』のあるキャンモアは、峯の形状から、“三人の尼さん”のキャラクターが生まれ名付けられたスリーシスターズマウンテンの山裾にある町。初めて訪れたキャンモアは日本人には高名なバンフの隣町であり、観光地というよりは、静かなリゾート地という表現がふさわしい、落ち着きのある町だった。

 

グラッシーハイツ

グラッシーハイツ外観
グラッシーハイツ外観

以前訪れた、スイスのリゾート地にあるカフェを思い出させるような、こざっぱりしたセンスのいいカフェが並ぶダウンタウンから、車で10分ほどの住宅街にグラッシーハイツは位置していた。

B&Bといえば通常、朝食がつくのだが、グラッシーハイツでは朝食はつかない。ツアー会社をしているため手が回らないという事だ。その代わり自由に使えるキッチンとBBQセットが用意されている。それはそれでまた気がらくだし、希望があれば旅の手配や行程についての相談にのるということなので、これは助かると思った。

外回りに広いテラスが望める。テラスに通じる階段を上がって、テラス口から部屋の中に案内された。玄関に入ると、ダイニングスペースとひとつになったリビングルームが拡がっていて、その予想外の広さに驚く。一瞬で、快適な空間であることが見て取れた。

リビングスペースのコーナーには座り心地のよさそうなソファーがL字型に置かれている。オーナーの森田氏の室内の説明が終わるなり、早速 ゆったりとしたソファーに身を沈めた。

安堵感とまったり感

リビングルームの奥にはツインのベッドが置かれたベッドルームがあり、クロゼットには仕切りのある収納ケースが置かれ、使い勝手のよさそうな構造を呈している。滞在は4日間だが、マイスペース感覚を味わうべく、旅行鞄の中身を収納ケースに振り分けてみる。人は不慣れな先で、どこか心もとない感じを拭えずに持っている。このような些細な工夫は、不思議に、新しい場所に馴染ませる。いつか日本で本州の最北端の小さな町に旅行したとき、忘れられない旅館のキャッチグレースが『我が家のような○○館』とういうものだったが、まさに、我が家のようにくつろげる宿では、どんな豪奢な宿にもまして、快適な時間が過せるものだと思う。日常を離れて旅に出るのだが、日常の快適さは欲しい。そして日常にない、まったりできる空間を求めている。

高山植物とクオーリー・レイク

森田氏に案内されて、グラッシーハイツの背後にひかえる林の小道を抜けて、散歩にでる。道の両側はさまざまな高山植物が咲き乱れ、その種類の多さに驚く。

「ロッキーの主なる高山植物がほとんどこの辺りで見られるんです」と解説され、なるほどと納得。まさに高山植物の宝庫だ。可憐な花々に心を奪われていると、大きな道に出て、その道は湖へとゆるい上り坂で続いていた。

「とてもきれいで水温がわりと高く、泳げる湖なんです」

湖の名前はクオーリー・レイク。道の上からその姿を見下ろしたとき、おもわず歓声を上げた。ちょうどサッカーグラウンドの半分くらいの大きさだろうか。湖畔は絵のような、きれいな丸をえがいていた。先週まで記録的な雨が続いていたあとの、打って変わった快晴の日々の初めての日曜日とあってか、たくさんのひとたちがきもちよさそうに泳いでいる。飛び込みをしているティーンエイジャーたちがいる。ビーチになっている浅瀬のほうでは、子供達が色とりどりの水着で、はしゃいでいた。

一望したその景色にはどこか深い懐かしさを感じた。まるでスタジオジブリの映画の一シーンのような、とても牧歌的な風景だった。そしてそれは平和の象徴のように、そこにあった。

「この湖はこの土地の財産ですね!こんな湖まで歩いて5分のロケーションなんてすごいところにありますね!」

わたしは、興奮して森田さんに話しかけた。湖上では、小さいゴムボートで遊んでいる家族連れがいて、思わず、家からボートを持ってくればよかったと、思った。B&Bでレンタル用にボートかカヌーを用意してくれていたらいいのに、と思った。

贅沢な旅の時間

泊する宿を拠点にしてあちこちに観光に遠出するのもいいが、滞在中の丸一日、何も予定をせずに、ゆっくりと過す日があってもいいとかねてから思っていた。しかし.今までそのすぐ近くで時間を過ごしたいと思える宿にあまり出会えずチャンスを逸していた。私は翌日、昼近くまで眠り、備え付けの炊飯器で、用意されていたお米を炊いて、持参した梅干しと焼き海苔でおむすびを作り、サンダル履きで湖に出かけた。湖のほとりで過した午後のひとときは、極上の贅沢な時間であり、旅する者の心と身体にミネラル分を 注ぎ込むのにあまりある充実した時間だった。

清潔で広々とした室内
清潔で広々とした室内

我が家のような

その後の日程の中で、森田氏が魅せられて、宿の名前ともなったグラッシーレイク、またナコダロッジ、カナナスキ・ビレッジなどにも案内していただいた。駆け足のロッキーの旅がお陰で盛りだくさんの充実したものとなった。そして毎日、我が家のようなグラッシーハイツの清潔でくつろげる空間で一日の疲れを癒すことができた。

バンクーバーに戻って、ちょうどロッキーの旅を考えていた友人家族に、この‘宿を強くおすすめしたのはいうまでもない。

所在地
Grassi Heights
956 Lawrence Grassi Ridge
Canmore Alberta T1W 2Z6
Canada
(キャンモアダウンタウンから車で10分)
お問い合わせ
カナディアンコーディネイトシステムズ(CCS)
後藤えむ

東京生まれ 。日本において「an an」、「Hanako」などの雑誌編集、JAL、東京電力、シチズン、ブリジストン、日本興業銀行等のメジャー企業の広告を手がけるアートディレクターとして活躍していたが、バンクーバー移住後はフォトグラファーに転向し、バンクーバーで数々の写真展を開催している。写真の主なモチーフは、自然、街、人。また、2005年にファッションブランド、Jha Jha Ojha Angelをスタートさせ、現在までに2回のファッションショーを開催している。
http://www.emu-photograph.com/

  
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