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山火事は朗報!
2003年夏、40日以上も続いたクートニー国立公園の山火事は、東京ドームの3,200倍もの森林を焼失する大火災となった。しかしながら、大袈裟に自然界の主張を代弁すれば、これがバンザイ三唱の朗報となるのだからおもしろい。
カナディアンロッキーの4つの国立公園(バンフ・ジャスパー・ヨーホー・クートニー)は、Fire-prone Ecosystemという生態系で成り立っている。これは「頻火生態系」と訳され、山火事が発生してこそ自然が豊かになるという仕組み。ロッキーの自然と山火事は、「水魚の交わり」を結んでいるのだという事実である。カナディアンロッキーは基本的に雨量が少なく乾燥した気候、加えて雨を伴わない雷が多いため自然発火の火事が起こりやすい。
深い森林が広がる土地は、地面まで太陽光が届きにくい。ところが、ひとたび山火事が発生すれば、焼け跡は十分すぎるほどの光を浴び、それを必要とする多種の植物が繁殖していく。落ち葉や小枝など、燃えた有機物は栄養分となって土壌に染み込み、森の再生に多いに貢献してくれる。植物の種類が増えれば動物の種類も増え、食物連鎖が正常に機能する。また、樹木を侵す害虫や寄生植物なども、火事によって死滅してくれる。マツ科のロッジポールパインやキツツキ類などに代表されるように、進化の過程で山火事に適応する能力を身につけた生き物も少なくない。
さらに、山火事の恩恵は人間にもあるという。「周期的な森林火災」は、付近の住民にとっても不可欠となる。短い周期で小規模な山火事が発生しなければ、Woody Fuelsと呼ばれる倒木・枯れ木、落ち葉や小枝などが次第に蓄積されていく。その名のとおり地面には燃料が山積みされ、急速に燃え広がる危険をはらんでいる。少量なら土壌の栄養となる有機物も、大量にあると地面まで焼き尽くす燃料と化してしまう。2003年の大火災は、小規模な火事を繰り返していなかったために広がりすぎたとの声もあるほどだ。
1994年から始まった Prescribed Burn(森林の火入れ)は、事前に古い森を燃やす作業。森林を再生する目的はもちろんのこと、大規模な火災を未然に防ぎ、観光客や住民の安全を確保するためでもある。クートニー国立公園の大火災と同じ年の春、バンフ周辺では3,900ヘクタールの広範囲で火入れが行われた。町に近すぎるために苦情も相次いだようだが、もしこの作業を行わずに7月からのあの気候(高温・乾燥)を迎えていたら、手のつけられない森林火災は完全に町を包んでいたかもしれない。
山火事跡は、やがて異なる世代や種類を生み出し、植生構造のモザイクを創ってくれる。近い将来、豊かな自然が広がることを想像すれば、やはり朗報と言えるのだろう。


