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カナダのクマより日本の皆さんへ

by 田中 last modified 2007-01-10 02:28

「冬ごもり」中のグリズリーより日本の皆さんへのメール。ちょっと誤解を解きたいようです…

送信者:カナダのクマ
日時:2007年1月○日
宛先:日本の皆さん
件名:はじめまして

僕はカナダのロッキー山脈に棲むグリズリー。北海道のヒグマさんたちとは親戚です。今回は日本の皆さんに、真冬の僕らを知ってもらおうと、思いきってメールしてみたんだ。 僕たちのことが正しく伝わればうれしいな。 

皆さんは僕らの非活動期を「冬眠」と呼ぶけれど、本人たちは疑問。冬眠って、活動期よりも体温が極端に下がるはず。哺乳類は普通5度前後とかなり低いんだ。なかにはマイナスにまで下がる種類もいるくらい。それに、冬眠中でも何度か摂食や排泄もするんだよ。でも、僕らは飲み食いなどしないし、用を足すこともない。体温も、38℃くらいから5〜6℃下がるだけ。だから冬眠じゃなくて「冬ごもり」なんて呼ばれることもある。今だって、こうやって皆さんにメールしているしね。ちなみに、広辞苑には「擬似冬眠」と書かれてあるよ。

あ、念のため言っておくと、僕らは何も食べないから排泄をしないというのは間違い。体温が30度以上もあれば新陳代謝が維持されているからね。そんな状態で何ヶ月もおしっこを出さなかったら、体中がむくんでしまうはず。でも、僕らの体内にはクレアチニンという物質があって、それが血液中で増えて尿素を抑えてくれるんだ。

さて、僕らの奥さんたちには、これから「出産」という大イベントが控えている。そう、子供たちは真冬に生まれる。

僕らの交尾期は6月下旬から1ヶ月ほど。ちょうど日本からハイキングする人たちで賑わう頃だね。彼女たちの妊娠期間は8ヶ月前後。人間よりは短いけれど、他の哺乳類に比べたら3〜5倍もの長期間。これは、卵子が受精してもすぐには着床せず、10〜11月頃まで子宮内を浮遊する「遅延着床」が原因。交尾後の夏から秋にかけて、彼女たちが十分な栄養(脂肪)を取るまで、卵子は着床しないらしい。つまり、非活動期に出産と授乳が可能なエネルギーを得られた女子だけが妊娠できるということ。

夏以降、僕らがカロリーの高いベリー類を大量に摂取する理由は、もちろん冬に備えるためだけど、彼女たちはさらに妊娠できる体を作り、出産や子育てに備えるためでもあるんだよ。だから僕らはベリーを探すのに必死。だって、1日に10万粒は食べなきゃならないんだから。日本からの皆さんが近くでカメラを向けたって、ポーズを取る余裕なんてないのさ。

ひと月以内には出産が始まるはず。早ければ1月下旬頃だからね。特に僕らグリズリーは毎年のように生息数が減っているから、少しでも多くの子供が生まれるよう願っている。僕らはカナディアンロッキーの自然が大好き! ここの生態系が、いつまでも正常に機能されますように。

では、いずれこの土地でお会いしましょう。 

と言いたいところだけど・・・ 

僕らは皆さんのことがとっても怖い。だからなるべく会わないでね。

  
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