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編集長ブログ
旅は筋書きのないドラマ
先程掲載した記事「レンタカーを借りる」でも触れましたが、その昔アメリカでレンタカーを借りた時にひどい目に会ったことがあります。しかしそのトラブルがあったがために、思いがけない人の親切に触れることができたのだから旅は面白い。
あれはサウスダコタ州のラピッドシティーでした。米大統領の巨大な彫刻が掘られたマウントラッシュモアで有名な町です。その日はバッドランド国立公園に向うため町で一番安いレンタカーでクルマを借りました。このレンタカー会社「中古車は買うのに、中古のレンタカーは借りないの?」というのがキャッチコピー。怪しげです。
借りたクルマは古いツーシーター。おんぼろながらもちょっとかっこ良かったので、不安を感じつつもそれで出発。
走りながら冷房のスイッチを入れると送風口からはドライヤーのような熱風が。いくら待っても冷える気配なし。なんせ「中古車のレンタカー」なのだから仕方ないと冷房はあきらめることにしました。
次のトラブルは交差点でシートのポジションを変えようと、レバーを動かしていた時の事。背もたれがなんだかおかしくなり、体重をかけるとそのまま後ろに倒れる状態に。体重を抜けば元に戻ります。どたばた喜劇のような状況に思わず笑ってしまいました。
引き返すか迷ったのですが、あまり時間がないし面倒だからいいやとそのままドライブを継続。姿勢は腹筋にちょっと力を入れていればなんとか維持できます。
高速道路に入りしばらく走っていると今度はボンネットから白い煙がもくもくと出てくるではありませんか。その日は真っ青な空にぎらぎらの太陽。気温はたぶん40度近くあったのではないかと思います。そう、オーバーヒートです。
とりあえず路肩にクルマを寄せてボンネットを開けてエンジンを冷ましていました。メカの事はさっぱりわからないのでこの位しかできることがない(苦笑)。
周りは荒野。携帯電話のない時代とありなすすべもなし。クルマのシートを倒し(自動的に倒れるのですが)どうしようかと思案していると、通りかかった一台のクルマが停まってくれました。
降りてきた男性につたない英語で事情を話すと、冷房の効いた彼らのクルマに乗せてくれ、公衆電話のある場所まで連れていってくれました(当時は携帯なんてものはありません)。これであやうく荒野の真ん中でひからびる危機から脱出できました。
助けてくれたのは30才くらいのカップル。バットランドに行った帰りとのこと。実は今日はそこに行きたかったんだというと、「じゃー、連れて行ってあげるよ」。そこからバッドランドまではたぶん片道50キロくらいの距離です。
レンタカー会社には電話をしてくれ、レッカー車の手配から無料の代車の交渉までしてくれました。手際良く処理をしてバッドランドに向けて出発。もう午後遅くになっていたので、バッドランドをゆっくりと見ることはできませんでしたが、そんなことはもうどうでもよくなっていました。もう胸がいっぱい
ラピッドシティに戻る頃には地平線は夕日で真っ赤に染まっていました。
その後何人かのアメリカ人にこの話をしたら「それはすごくついていた」と驚いていました。なにかと物騒な国だから道でクルマが故障していても、危険を感じてまず停まらないだろうというのです。ましてや、あの時僕は助けをもとめるわけでもなく車内でなすすべもなく座っていただけなのだから。
今でも夕焼けを見るとその人たちの親切をよく思い出します。
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